地元

いくつか「住んでみたいなあ」という町がある。

例えば、北海道の増毛や松前、それから山陰の浜辺の町、鹿児島坊津、四国徳島の山あいの町など。実際に自分が訪れた場所だが、その時はそう思っていなくても、後になって「あそこは良かったなあ」という町がいくつかある。都市部でいえば、長崎も好きだった。

それからはっきりとした町ではなくても、漠然と、東京のちょっとごみごみとした商店街があるような安アパートに住んでみたいとか、近くに大きな川が流れる工業地帯の一角に間借りしてセンチメンタルな恋をしてみたいだとか、そういうヘンテコな理由で住みたい場所というのもある。無論、本気で住むつもりはない。ただ、「もしも体が二つあったならば…」というような感覚で、住んでみたい町は日本にいくつかある。

最近、地元のフリーペーパーでコラムを担当させてもらうことになり、埼玉県行田のことについてちょこちょこ書いている。僕は中学卒業と同時に地元を離れたからか、郷土への想いというのが人一倍強いような気がする。誰にでも多かれ少なかれノスタルジーはあるだろうけれど、22,3の頃、地元に住んでいた時は、休日のたび、一人で市内を散策していた。

たかだか人口8万の北関東にある、東京のベッドタウンみたいなこの町を、それこそ隅々まで知ってやろうと思っていた。それが役立っているのかもしれないが、地元の話を書いている時というのは、また格別の嬉しさがある。指先から郷土への愛がにじみ出てくるような感覚だ。

これはきっと、日本のどの町に住んでいても、変わることのない感情なんだろうと思う。